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開催中

TEKU · MAKU · MAYAKON

2026.8.22 — 2026.10.11

MORI YU GALLERY KYOTO

京都府 京都市

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概要

「テクマクマヤコン」――天才・赤塚不二夫が生み出した『ひみつのアッコちゃん』におけるこの変身の呪文は、単なる少女漫画のファンタジーにとどまらず、他者を経由して自らが変わっていく「静かな変身」の本質を物語っている。米村竜光の造形と思考の起点には、幼少期のごっこ遊びの記憶が存在する。既存の物語の中に自分だけの居場所を作るため、自分だけの仮面や小道具といった「世界と接続するための器」を自ら制作し、友人たちと共有する世界の中へ持ち込んでいた原体験。それは、自身が影響を受けてきた映画やアニメといった「現代の神話」を経由し、現在の作陶の実践へとまっすぐに繋がっている。米村は「写しは過去の身体を辿り、能面は身体を器へ変換し、仮面は自分自身を物語へ接続する」と語る。能面が演者の個人としての輪郭を後退させ、神仏や異物をその身に宿す「身体を器へと変換する装置」であるように、彼は茶碗という物質的な道具にとどまっていた器概念を、物語や信仰、他者そのものを受け入れる関係性の構造へと大きく拡張してみせるのだ。この個人のパーソナルな身体感覚に基づくアプローチは、日本の現代陶芸が直面してきた大きな歴史的・構造的課題を解体する批評性へと直結している。 日本の現代陶芸は、西洋美術史やモダニズムを「普遍的な基準」とする構造の中で、長らく劣等感や周回遅れ感というコンプレックスを抱え続けてきた。戦後、走泥社の八木一夫らが実用性を捨てた《ザムザ氏の散歩》などの「オブジェ焼」を生み出した際にも、常に「クレーやミロなどの西洋モダンアートや抽象彫刻の模倣、二番煎じではないか」という自他双方からの疑念が付きまとった歴史がそれを象徴している。 美術批評家の北澤憲昭らが分析したように、明治期に西洋から「Fine Art(美術)」という概念を導入した際、「Craft(工芸)」がその下位分類(応用美術)として置かれて以来、日本の陶芸は西洋由来の批評言語を参照軸にせざるを得ない構造的ジレンマを抱えてきた。どれほど先進的な造形を試みても「西洋現代美術の後追い」とみなされてしまうこの歪んだ評価システムに対し、米村は西洋理論の単純な追従ではなく、「写し」「見立て」「器」といった日本固有の美学と身体性を深く読み直すことで、構造自体の克服と相対化を試みている。彼にとっての「写し」とは単なる形態のコピーではない。それは本歌を丁寧になぞりながら、かつての作り手がどのような選択や判断、迷いや速度で土に向き合ったのかを、現在の自らの身体を通して追体験する高度な解釈の行為なのである。 さらに、美学者の谷川渥が指摘した茶陶における「自然らしさ(侘び寂びや綺麗さび)」が実際には高度に計算された人為の演出(シミュラークル)であるのと同様に、陶芸とは作家の意図的な作為と、窯の中の不可逆な物理変化という制御不能性が高度に交差する領域であり、現代における「演出された自然」を問い直す強力な批評装置となり得る。また米村は、哲学者アンリ・ベルクソンの『物質と記憶』における「過去の全経験は意識の底たる純粋記憶に保存されており、現在の身体や知覚が必要とした瞬間、身体の運動と結びついてイマージュ(像)として立ち現れる」という構造を正確に理解し、それを作陶の実践へと落とし込んでいる。土を揉み、押し潰し、裂き、繋ぎ直すという無数の「現在の身体運動」を通じ、自らの意識の深層にある記憶やイマージュを手繰り寄せ、そのまま土という物質へと物理的に焼き付けているのだ。理論を単なる頭上の概念として弄ぶのではなく、手仕事という徹底的な身体運動を通して哲学の回路を物質化する点に、彼の表現者としての強靭なリアリティが存在する。 本展で発表される新作《Self Portrait Vessel》は、特定の個人像を描いたものではなく、古今東西の多様な他者を自らの身体に受け入れ、揉まれることで現れる「変容する身体の記録」である。赤塚不二夫の描いた変身願望や泥臭いごっこ遊びという極めて個人的なリアリティから出発し、西洋現代美術の批評理論や重厚な哲学を丸呑みにした上で確固たる造形へと昇華させたそのプロセスは、伝統と現代、西洋と日本、身近なポップカルチャーと高尚な美術批評といったあらゆる二項対立を静かに飛び越えていく。それは、他者を自らの身体に受け入れ、揉まれながら自分自身が変わっていく「地味な変身」の姿であり、確固たる身体性をもって新たな陶表現の可能性を鮮やかに提示する切実な思考と造形の軌跡である。

参加作家

  • 米村竜光

開催情報

開催期間
2026.8.22 — 2026.10.11
開館時間
12:00 〜 18:00
休館日
月曜日、火曜日、祝日
料金
公式サイトをご確認ください
会場
MORI YU GALLERY KYOTO
住所
京都府京都市左京区聖護院蓮華蔵町4-19
アクセス
京阪線神宮丸太町駅2番出口より徒歩7分、地下鉄東西線東山駅2番出口より徒歩13分

タグ

  • 工芸

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